先日貝塚市から来院された60代女性の方から「膝裏が痛い」ということで診たところ、いわゆるベーカー嚢腫のような腫れがあったため、今回はベーカー嚢腫について書きたいと思います。
1. **ベーカー嚢腫とは?:その基本と症状**

ベーカー嚢腫、または膝窩嚢腫は、膝関節の後部に形成される液体充満の嚢胞を指します。主に膝関節の滑膜からの過剰な関節液が、滑膜嚢を通じて膝の後部に溜まることで発生します。この状態は多くの場合、膝関節の炎症性疾患、例えば関節リウマチや変形性膝関節症に関連しています。ベーカー嚢腫の症状は、膝の後部に感じられる腫れや圧迫感、時には痛みを伴うことがあります。嚢腫が大きくなると、膝の可動域が制限されることもあります。また、嚢腫が破裂すると、ふくらはぎに痛みや腫れが生じ、深部静脈血栓症と類似の症状を引き起こすことがあります。臨床的には、触診や視診で腫れを確認し、超音波検査やMRIを用いて嚢腫の存在を明らかにすることが一般的です。
「腫」という文字から「悪性なの?」という疑問も生じるかも知れませんが、悪性ではありません。また中年女性に頻発することが多いことも言われています。
2. **発生メカニズム:ベーカー嚢腫の原因を探る**

ベーカー嚢腫の発生メカニズムは、膝関節の滑膜で生成された関節液が過剰になることから始まります。この過剰な液体が滑膜嚢を介して膝の後部に溜まり、嚢胞を形成します。通常、関節液の過剰生成は膝関節における炎症性反応の結果であり、これは関節リウマチや変形性膝関節症、半月板損傷といった膝関節の病態に起因します。これらの病態は滑膜の刺激を引き起こし、滑膜からの液体分泌を増加させます。また、外傷や感染症も嚢腫の形成に寄与することがあります。嚢腫の形成は、関節内の圧力バランスの崩れや滑膜嚢の構造的変異によっても促進されます。したがって、ベーカー嚢腫の治療には、基礎疾患の管理が重要となります。
3. **診断方法:どのようにベーカー嚢腫を特定するのか**

ベーカー嚢腫の診断には、詳細な病歴聴取と身体診察が基本となります。膝の後部に特徴的な腫れが見られる場合、多くの臨床医はベーカー嚢腫を疑います。触診により、柔らかく弾力のある腫瘤が確認されることが一般的です。しかし、正確な診断には画像診断が不可欠です。まず、超音波検査は嚢腫の存在を確認するための非侵襲的かつ迅速な方法として広く用いられています。さらに、MRIは嚢腫のサイズや位置、内部構造を詳細に評価するために有用です。また、MRIは膝関節の他の病変や嚢腫の基礎疾患を特定するのにも役立ちます。必要に応じて、関節液の分析を行い、感染症や結晶誘発性関節炎の可能性を排除することも考慮されます。
4. **治療オプション:手術から自然療法まで**

ベーカー嚢腫の治療は、その症状の重症度や基礎疾患に応じて選択されます。軽度で無症状の場合、経過観察が一般的です。しかし、症状が顕著な場合や嚢腫が大きく生活に支障をきたす場合、治療が必要です。まず、保存的治療として、安静、膝の圧迫、挙上、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の投与が推奨されます。これにより痛みや腫れを軽減できます。さらに、理学療法が可動域の改善に寄与します。症状が改善しない場合、関節液の吸引やステロイド注射を考慮します。外科的介入は、嚢腫の再発を繰り返す場合や、基礎疾患の手術が必要な場合に行われます。手術では、嚢腫の除去や関連する関節病変の修復が行われます。
手術や注射などの選択肢以外に、もちろん我々の立場である代替医療として整骨院や整体・鍼灸などが効果を発揮することもあります。
5. **予防と管理:再発を防ぐためのライフスタイルとケア**

ベーカー嚢腫の再発予防と管理には、膝関節の健康維持が重要です。まず、体重管理は膝への負担を軽減するために不可欠です。適正体重を維持することで、膝関節の負荷を減少させ、嚢腫の再発リスクを低下させます。定期的な運動もまた、関節の柔軟性と筋力を向上させ、膝の安定性を高める役割を果たします。ただし、無理な運動は避け、医療の専門家と相談の上で計画を立てることが推奨されます。また、膝に痛みや腫れが生じた場合は早期に医療機関を受診し、適切な治療を受けることが重要です。関節リウマチなどの基礎疾患がある場合、その疾患の管理を徹底することが、ベーカー嚢腫の再発防止につながります。
また、膝裏が痛いからと言っても、膝だけで人間の体は構成されている訳ではないので、腰痛や肩こりが併発している方は、体全体のバランスを整える整体などによって予防に努めることも大切です。


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