昨日の関東を襲った台風15号。
昨年のここ泉州地域を襲った台風と同様、かなり台風の勢力が近年増してきております。
昨日来院された岸和田市からお越しの方ともお話していたのですが、今から30年ほど前まではこの季節に気温が30度を越えること自体珍しかったのが、今では35度を越える猛暑がこの9月になっても続いており、今回台風被害に遭われて停電でエアコンや扇風機を使えない方たちはとても気の毒です。
早く復旧することを祈るばかりです。
さて、今回は貝塚市からお越しの方についてお話しますね。
『何もやった記憶がないのに右膝の内側が痛い』
とのことで来院。
主訴は五十肩による肩の痛み。
泉佐野市の整形外科へリハビリに通院されていたそうですが、
➀マッサージの上手な先生とマッサージの下手な先生があり、指名すると待ち時間が長い
②指名しなくても慢性的な痛みを訴えるご高齢の方が列をなし、待ち時間が長くてリハビリを受けるまでが半日仕事となる
③五十肩の痛みが出ている肩関節周辺を動かしたりマッサージしてもらったりだけだったため、痛みがなかなか解消されない
④時々腰痛や坐骨神経痛なども生じるため、身体全体をリハビリして欲しいけど、高齢者のリハビリで混雑していて希望を伝えにくい
などなど、色々なことが理由で、リハビリを断念されていました。
ですが、自分の体の治療を諦めていたものの、整骨院での骨盤矯正によって五十肩の痛みだけでなく、腰痛や坐骨神経痛など、身体全体のバランスを根本から解消していきたいとのことで当院へ来院されました。
五十肩や坐骨神経痛などの重度な症状は解消されましたが、身体の硬さの左右差や可動範囲の左右差は依然残っていたため、再発防止のために定期的な身体のメンテナンスのために継続して骨盤矯正に来院されていましたが、今回突発的な膝痛を訴えての来院となりました。
足を捻った記憶もなければ、歩きすぎた訳でもなく、全く何もしていないのに膝に痛みを生じているとのことで、こういう時こそしっかりと問診を取って色々と過去のできごとを詳細に思い出してもらうようにしています。
本当に何もしていないのに原因もなく膝が勝手に痛くなってくるほうが不自然でしょうから。
そして色々と問診をとっていてふと出てきたのが、
『もしかして、お盆期間中ずっと忙しくてバタバタしてて、正座したり立ち上がったりを繰り返すことが多くて、お盆終わってからもほっと一息ついて油断したからか体調崩したり身体全体の調子は思わしくなかったから、もしかしてあの時から徐々になんとなく歩き方とか身体のバランスも変やったかも!?』
とのこと。
正座したり立ち上がったりする動作を頻繁に繰り返した直後にすぐに膝痛が出てくれば、膝が痛くなった原因がはっきりとご自身でも分かるのですが、数日経過してからだんだんと負担がかかってきたことによってタイムラグを生じて後から出てくる膝の痛みの場合は、ご自身でも膝の痛みの原因に気がつかないことが多いです。
当院に来院される方だけではないでしょうが、整骨院・接骨院へ通われる方のきっかけは、『痛み』『コリ』などの自覚症状があってはじめて通われることが多いでしょうが、ほとんどの痛みやコリは急に生じるものではなく、日常生活での何気ない身体の使い方の癖によって習慣づけられて徐々に歪みを来たし、結果痛みやコリへと発展します。
つまり、急性外傷のいわゆるケガでしたらはっきりと明確な原因がご自身でも分かるものの、慢性的な症状や積み重なった身体の使い方の癖の結果として生じている症状は
『原因がよくわからない』
となることがほとんどです。
腹臥位で検査確認してみると、

左足よりも右足のほうが硬くなっており、外側に捻れているようでした。
また、膝に痛みが出てきだした時には、
『なんかもしかして膝腫れているのかも?』
と思われたそうで、左右の膝関節の周径を見てみると、

右側の膝関節周径が36.5cm
そして左膝関節の周径を計ってみると

36cmで左に比べると右側の方がやや腫れているようでしたが、膝関節に明らかな水腫が溜っているようではなさそうだったため、この程度の左右差でしたら利き足によるものと判断し、膝関節の周辺についている靭帯や軟骨に異常がないか検査開始。
膝関節の徒手検査にもいくつか種類がありますが、
➀ドレイヤーサインマイナス
当然ですが、膝蓋骨の骨折をしていることはないので当然陽性反応は出ませんでした。
②ウィルソンテストマイナス
これも膝関節内に遊離体があったり、離断性骨軟骨炎の場合には陽性反応が出ます。
③側副靭帯ストレステストマイナス
膝関節の内側と外側についている靭帯が傷んでいる場合は陽性反応が出ます。
④アプレイテストマイナス
半月板や靭帯損傷をしている場合は陽性反応が出ますが、これも大丈夫。
⑤引き出しテストマイナス
前十字及び後十字靭帯を損傷している場合は陽性反応が出ます。これもなし。
⑥ラックマンテストマイナス
これも前十字靭帯の検査のため大丈夫でした。
⑦ピボットシフトテストマイナス
膝関節前外側の不安定性を検査してみましたが、これまた大丈夫。
⑧ノブル・コンプレッションテストマイナス
腸脛靭帯炎の場合は陽性反応が出ますが、全く問題なし。
⑨膝蓋骨アプレヘンションテストマイナス
膝蓋骨の脱臼を起こさないかテストしてみましたがこれも大丈夫。
⑩ワイプテストマイナス
このテストによって関節内の滑液いわゆる水が溜まっていれば陽性ですが、それは大丈夫でしたが触り始めたときに、
『あっ、そこ痛い』
とおっしゃった部位がこちら↓

どうやら半月板損傷や十字靭帯や側副靭帯などの損傷ではなく、『鵞足炎』を起こしているようでした。
鵞足(がそく)とは、名前の通り、鵞鳥の足のような形をしているからそのように名付けられていますが、この部位に以下のような筋肉が付着しています。
➀縫工筋(ほうこうきん)

②薄筋(はっきん)

③半腱様筋(はんけんようきん)

この縫工筋・薄筋・半腱様筋は停止部は鵞足になりますが、起始部はそれぞれ上前腸骨棘・恥骨・坐骨といった骨盤でも異なる部位から着いているため、骨盤の位置がずれることによってこれらの筋肉の張力に違いが出てきて、結果として鵞足部を引っ張るため炎症を生じ痛みに繋がっているようでした。
ですので鵞足炎を起こしている膝そのものにマッサージをしても、鍼灸を施しても、注射を打っても、湿布を貼っても原因となっている骨盤を正しい位置に戻してあげて体全体のバランスを整えなければ、炎症はなかなか治まらず、膝の痛みは解消されてきません。
ですので膝の痛みが出ている場所は炎症反応があるため、膝関節ではなく骨盤を構成している股関節から調整していきます。

骨盤矯正によって股関節の位置が正しい位置に収まると、左右の足の位置が整ってきます。
この状態にしておいてから湿布をしたりアイシングなどによって炎症を鎮めることをするのはとても効果的ですが、身体の歪みを生じたままで湿布をしても炎症は引きにくいため、炎症が治まるまでに膝周りが湿布に負けて被れてしまうことになりかねません。
こちらの方のように、正座から立ち上がろうとする動作の繰り返しによって徐々に炎症を生じ、痛みに繋がることを、整骨院や接骨院では『亜急性』と呼んでいました。
ですが、この『亜急性』という概念は昨年削除され、原因が明確な急性外傷性のものだけが整骨院で健康保険を取り扱うことができる症状ということが決まり、益々健康保険を取り扱うことができる症状は整骨院・接骨院に来院される方にはいらっしゃらないことが鮮明となっている状態です。
『亜急性』に関する記事はこちらをご参照下さい⇒https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/599200/
ですが、健康保険が使える疾患と使えない疾患があったとしても、腰痛や肩こり・坐骨神経痛などの症状を解消し、快適な日々の生活を送れるようにサポートすることは我々整骨院・接骨院業界でも皆さんのお手伝いができるはずです。
身体の不調を解消する一つの選択肢とされることをオススメします。