空気のような存在

このところ連休にに台風が押し寄せてくるため、なかなかアルプス登山の計画が捗らなかったため、週末から急遽一泊で登れるアルプスの木曽駒ヶ岳に行ってきました。
標高2956mの中央アルプスにある山で、さすがに3000m級の山では空気もきれいで澄んでいて天気も良かったです。


高山になれば酸素濃度が低下してくるため口を覆っていると大変危険で、いわゆる高山病になりかねないのですが、そんなのお構いなしでマススをしている方が散見されました。
酸素濃度が低下して二酸化炭素が増加していることは昨今の環境問題で騒がれているため周知のはずですが、なぜか地球規模では酸素が大事であると言いながら個人レベルでは酸素を取り入れることを拒んでまでして感染しないように?感染させないように?着用しているとは日本人のバカがつくほど真面目な国民性のせいなのか、それとも体育の授業で習ってきた「前に倣え」精神なのか分かりませんが、高山病のリスクを顧みず口を覆ったまま高山を登ろうとする勇気には脱帽です。


さて、人間は通常大気圏の底で生活していますが、「空気のような存在」というような言われ方をするように普段は空気の存在を意識することなく生活しています。
ですが人間が生きていくためには空気中の酸素を取り入れることによって全身に栄養を運んだり、代謝によって発生した熱によって一定の体温に保つようにできています。
また空気が存在することで音や匂いを伝えることができています。

では、この空気の成分がどのような構成で成り立っているか見てみましょう。
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①窒素(nitrogen)
空気中の78%を占めているのが窒素ですが、不活性ガスのため人の生命と直接のかかわりはほとんどありません。ですが、高気圧下で過ごしたあと急に常圧に戻るような場合は、窒素ガスが血液中で気泡化してしまいます。スキューバダイビングで深水まで潜ったあと急浮上するとこういった現象が生じるため、潜水病または潜函病などと呼ばれています。

②酸素(oxygen)
大気中に約21%存在しており、呼吸により肺胞を経て血液中のヘモグロビンと結合することで身体の各組織へ酸素が供給されます。
空気中の酸素が12~16%になると、頻脈呼吸数増加頭痛吐き気などを生じるほか、集中力が欠けてきたりします。
さらに10%以下になると、意識不明けいれんなどが生じ、この状態が長時間続くと呼吸が停止ししに至ります。
逆に酸素濃度が60%を超えてくると酸素中毒未熟児網膜症などが発生すると言われています。

③二酸化炭素(carbon dioxide)
炭酸ガスとも呼ばれ、大気中に0.03%含まれています。有機物燃焼の際に発生するほか、呼気中に約4%含まれています。
毒性は比較的低く、3%程度ではとくに著しい症状は見られません。屋内基準は0.1%とされていますが、この理由は二酸化炭素の毒性のためというよりは、むしろ密閉状態での燃焼状態や呼気などによる増加が考えられ、空気汚染の指標としての意味を持っています。
また、二酸化炭素地球温暖化との関係で注目されており、環境活動家と言われる少女から日本のガソリン自動車の排気ガスがこの二酸化炭素問題を引き起こしていると訴えかけ、日本の自動車産業も電気自動車への移行を余儀なくされているようです。世界で最も多く二酸化炭素を排出しているのは確かお隣の国だったかと思いますが・・・。

④その他の成分としてアルゴンが0.94%、ヘリウム、ネオンなどが空気の成分として含まれています。


次に空気の異常成分として挙げられるのが
①一酸化炭素(carbon monoxide)
一酸化炭素は有機物が不完全燃焼したときに発生する、無色、無臭、無味、無刺激性のガスで、人の感覚器でその存在を感じることは困難です。
その有害作用は、赤血球のヘモグロビンと強く結合し、酸素の利用を妨げることにあります。空気中の一酸化炭素濃度が10ppmを超すと精神活動の低下がみられ、100ppm程度で頭痛めまいが生じ、5,000ppmでは1時間以内にしぼうしてしまいます。
一酸化炭素中毒は換気が悪い場所で都市ガスや練炭、灯油などを燃やしたり、自動車の排気ガスの混入でよく発生します。
また、以前から大気汚染物質として問題になっており、自動車などの移動発生源から排出されますが、排ガス規制の結果、最近の国産車の排出量はかつての10%以下となっており、環境中の一酸化炭素濃度は著しく減少しています。

②硫黄酸化物(sulfrur oxides)
SOx(ソックス)ともいわれ、二酸化硫黄、三酸化硫黄などがあります。木材、石炭、重油など硫黄を含むものが燃焼したときに発生します。
古くから大気汚染物質として知られていますが、工場やビル、火力発電所など、主に固定発生源から排出されます。
二酸化硫黄は無色ですが刺激臭があり、水に溶けやすい性質があります。よく温泉街などで臭うたまご臭のような匂いがこれに当たります。吸入すると鼻粘膜、喉頭、気管支など上気道を刺激し、長時間吸い続けると慢性気管支炎喘息を起こします。
また、以前に騒がれていた酸性雨の主成分としても知られており、酸性雨は植物に悪影響を及ぼすだけでなく、湖沼を酸性化して環境に影響を与えます。

日本では高度経済成長時代に大量の重油が脱硫されずに消費され大気中に放出された結果、四日市ぜんそくなど各地で大きな問題となりました。
ですが排出規制が進むに従い急速に改善され、昭和42年の全国平均0.059ppmが5年後には約半分となり、昭和52年にはさらに25%減少し現在に至っているそうです。

③窒素酸化物(nitrogen oxides)
NOx(ノックス)とも呼ばれ、毒性などから問題となるのは一酸化炭素と二酸化炭素であり、空気中で物が燃焼する際に発生し、その温度が高いほど発生量も多くなります。
大気汚染物質としての窒素酸化物は主に自動車などの移動発生源から発生します。窒素酸化物は刺激性がありますが、水にはあまり溶けないため、吸入すると肺の深部にまで到達し、慢性気管支炎肺気腫などを引き起こします。また炭化水と太陽光から光化学ダイオキシダントが生成するときの触媒の役目もしています。
日本では自動車の台数増加に伴って次第に環境中の濃度が高くなりました。排ガス規制の努力にも関わらず、自動車の台数が増加しているため、環境中の濃度はほとんど改善されていません。特に道路沿いの地域に問題が多くなっています。

④浮遊粒子状物質(SPM)
空気中に浮遊している微粒子を総称していますが、その成分には様々なものがあります。大気汚染物質として知られていますが、直径0.1~5㎛のものでは肺胞まで到達するため最も危険です。

⑤光化学オキシダント(photochemical oxidants)
上記で述べてきた汚染物質を一次汚染物質と言うのに対し、この光化学オキシダントは二次汚染物質と言われています。二酸化炭素や炭化水素を原料として太陽光のエネルギーによって生成されるオゾンやアルデヒド類などを指しています。目やのどを刺激するほか、植物にも影響を与えます。


このように空気中の成分にも人間の体にとって必要なものもあれば有害なものも存在しています。
ですが普段何気に呼吸によって取り入れている空気ですが、空気が大切であるという意識がある人は水に溺れた経験でもない限り、存在自体が当たり前のようになっています。
これを慣れとも言い、順応とも言われます。

肩こり腰痛なども同様に、慢性的にずっと肩こりがあったり腰痛が慢性化しているとそれが普通になりますし、逆にそういった不調が解消されてくると今度は体の調子が良いことに慣れてきてついつい体のことに意識が向かなくなってきたりするものです。
当院に来院される方の多くは肩こり腰痛などと言っても比較的重度になってから来院される方が多いです。
なぜなら完全予約制自費診療のみの受付だからです。
軽度の肩こりやちょっと腰がだるい程度の場合、
今日たまたま暇ができたから整骨院通おう
というようにほとんどが飛び込みで来院されるケースが多いため、健康に対する意識レベルは相当低いと言えるでしょう。

ですが当院に来院されている方も、ある程度不調が解消されてくると、つい不調がなかったかのように振る舞って、せっかく痛みが取れてきているぎっくり腰を再発したり、坐骨神経痛が再発したりするケースも見られます。
体のトラブルが解消されてきた時こそが最も意識して体の使い方などに気を配ることではじめて腰痛五十肩などの不調の予防に繋がります。
健康なのが当たり前でつい「空気のような存在」にならないように常にご自身の体にアンテナを張ることが大切です。