受領委任と償還払い

先日のお休みを利用して今年最後の登山へ行ってきました。
向かった先は御在所岳
滋賀県と三重県の県境にある1,212mの山で、10年ぶりのためすっかりどんな山だったか全然おぼえていませんでしたが、紅葉も随分と進んでいました。

小さく写っていますが、ゴンドラで山頂まで行けるため、我々が2時間近くかけて登った山頂にものの数分で下からゴンドラで登ってこられている方も沢山いらっしゃいました。
登山者はどなたも口パンツをしておらず、ゴンドラで来ている観光メインの方は全員口パンツをしている状態でした。
この光景を見るといつもふと思い出すのが昨年の東京オリンピック
選手が競技中は口パンツを外し、競技が終わったとたんに全員口パンツで覆っている姿をいつも思い出し、白けてしまいます。
登山者だけノーパンツが許されて観光で来ている方は口パンツを強要され、なんだか不思議な世界にいるようで異様な光景でした。

下山中は上空をずっとヘリコプターが巡回していたので、おそらく滑落事故でけが人が出たのでしょうが、登山中に口パンツによって酸欠となって高山病にでもなってしまうほうがコロちゃんに感染するよりもっと恐ろしいことです。
登山に行くときには万が一のケガに備えて健康保険証の携帯は必須です。


さて、先日マイナンバーと健康保険証について書きましたが、その際受領委任払い償還払いについて書きましたが、貝塚市津田南町からお越しの方から
どういう仕組みか分からないから教えて欲しい
とおっしゃられたため、今回は整骨院での健康保険取り扱いに対する受領委任払い制度償還払い制度についてお話ししたいと思います。

その前に、日本には国民皆保険制度という大変有難い制度があるため、国民一人一人の支えあいの中で健康保険制度が成り立っています。
また、「フリーアクセス」と言って保険証1枚あれば、いつでも自由にどの医療機関であっても保険適用として医療を受けられる大変有難い制度があります。

医療サービスを受けた利用者には一定額の自己負担が発生します。
例えば我々現役世代は原則3割負担で残りの7割が税金から賄われるようになっています。ただし、年齢や所得に応じて、病院薬局での支払額が1か月の間で一定額を超えた場合には、それ以上の負担はしなくても良い「高額療養費制度」というとても素晴らしい仕組みが設けられています。

この制度のおかげで、20年ほど前に高校時代の野球部から誘われて参加した草野球の最中に右足を骨折したときには治療費の負担が少なくて済み、大変助けられた記憶があります。

病院歯科での治療を受ける際にはこのような保険制度のもと受けることが可能ですが、整骨院接骨院での健康保険の取り扱いについては少々異なります。
受領委任払い制度」というものが設けられているのが整骨院での健康保険の取り扱える仕組みとなっています。
どういう制度かというと、受診者は窓口で一部負担金のみ支払うことで、残りの保険で賄われる部分を整骨院側が代理で請求するというものです。
ですので委任状へのサインというものが必要となります。

このようなレセプト用紙に赤で囲まれた部分に健康保険証の世帯主のサインをすることで、整骨院側が受診者の代わりに保険請求をすることで受診者は一部負担金だけで受けることができるのが受領委任払い制度となります。

一方、償還払い制度というのは、一旦受診者が全額自費で負担して窓口で支払った後、受診者自身が保険者へ出向いて本来の一部負担分以外の支払った分を後から申請することで保険が賄われる制度を言います。

ちょくちょく当院に来院されている方で聞くのが
整形外科で装具作ってもらったけど、一旦全額窓口で支払ったけど、手続きしたら還付してもらえる
というもの。

出産も同じく産婦人科では全額自費で支払った後、申請すれば還付されるというものも同じく償還払い制度によって成り立っています。


このように整骨院接骨院受領委任払い制度は受診者にとってはいちいち保険者まで各自が申請することを考えると負担がかからず大変便利な制度となりますし、保険者が一人一人に対応することを考えると煩雑な業務を軽減してくれている大変有難い制度です。

ですが2年後のマイナンバーカード健康保険証を一体化するとなると整骨院でも今後受領委任制度を継続していくためにはマイナンバーカードを健康保険証として読み取る機器の導入が必要となってきますし、もしそのような機器の導入が難しいとなると受領委任制度による保険請求を辞めてしまい、償還払いによる全額一旦自費によって整骨院を受診する形となるのではなかろうかというのが個人的な予測です。

そうなると整骨院へ毎日のように足しげく通院している受診者の皆さんは毎月のようにご自身で保険組合まで出向いて申請する必要性が生じてきます。
また、毎回のように
う~ん、今月はどこをケガしたことにして申請すればいいんやろう?
償還払いの煩わしさのために結局健康保険診療整骨院へ通院するということが面倒なことになってくるので、最終的には整骨院健康保険診療で通院される方は本当の意味での急性外傷性の負傷によって通われる方しかいなくなくなることでしょう。
そうなれば本当に保険が使えて助かる方だけに保険が適用されて、整骨院での健康保険診療の範囲外の症状で通院されている方にはそもそも自費診療でご利用頂くことになり、整骨院の保険制度の見える化につながって、よりクリーンな保険請求とよりクリーンな業界のイメージへとつながるはずです。

上記のことを説明したところ、貝塚市から来院されている方から、
そしたらスッキリさんでも窓口で毎回5,000円払ってるけど、自分で保険組合に申請したら一部負担金以外のお金還付されるの?
とおっしゃる方がありましたが、
ではその腰痛ケガですか?
とご質問すると、
アッ、そうやった。ケガちゃうからどっちみち還ってけえへんなあ
と諦め半分の方もありましたが、そもそも当院へ通院されている方は金額が安いから受けて下さっている訳ではなく、価値を感じてくれているから受けて下さっているのであって、どうしても健康保険扱いで整骨院を利用したいというのであれば、最低限ケガではないけどケガにしておくしか方法はないでしょう。

ですが、まれに急性外傷性の捻挫や打撲で診て欲しいという方が来院されることがあります。
場合によっては1円もお支払い頂くことなく施術させて頂くことがあります。
代表的なのは「肘内障」いわゆる子供の手が抜けた状態のこと。
整復して保険請求すれば良いのですが、残念なことに当院には保険請求時に使用するレセプトコンピューターがないため、煩雑な手書き業務でこなすレベルのものはお金どうこうよりもさっさと痛みから解放してあげるほうが気分的に楽だという理由だけでここ数年は肘内障に関しては無料で整復している次第です。

むしろ肘内障程度のものはママさん連中を指導して、自分たちで引っ張って子供の肘が抜けたのなら自分たちで尻ぬぐいして整復の仕方くらいマスターしてもらいたいところです。


整骨院健康保険を取り扱った施術を受けられるのも時間の問題となってきているようです。
今後は提供する側も施術を受ける側もルールとマナーを守って整骨院を利用するようにしましょう。
そうすることで健康保険制度という有難い助け合いの制度が次世代にも健全に保つことができることでしょう。